長年自宅で親の介護をしたことを考慮してほしい(寄与分)
特別受益・寄与分被相続人(亡くなった方)の配偶者(夫や妻)、直系血族(子や孫)、兄弟姉妹は、いずれも被相続人を扶養する義務が法律上はあります(民法752条、877条1項)。
この義務は、親族の扶養のために必ずお金を払わなければならないというような強い義務ではなく、みんなで助け合いましょうという努力義務のような性格もあるので、裁判沙汰にされて相互扶養義務を請求されるということは、ほとんどありません。
ただ、実際に親族のためにお金や労力を実際に使ってしまった場合、社会通念上、そのくらいは、親族だったらやってあげてもおかしくないというレベルのお金や労力ですと、この親族間の相互扶養義務を果たしただけで、何か特別なことをやってあげたわけではないということになってしまいます。
被相続人(亡くなった方)のためにお金や労力を使ってあげた場合に、そのことを遺産分割で考慮されるようなものを特別受益と言いますが、親の介護をしたことが特別受益として認められるためには、相互扶養義務を超える「特別な」寄与をしたということが必要になります。
特別な寄与とは、被相続人(亡くなった方)の財産の維持・増加に特に貢献したということで、よくあるのは、親が経営する事業を手伝って、親の財産が増加する手助けをしていたというようなことです。
ただ、この場合も、相応の給料をもらって手伝っていたのであれば、給料の対価として働いていたということになり特別の寄与にはなりません。
通常、親族であればやってあげてもおかしくないという介護をしていたということが「特別な」寄与であると認められることは難しいです。
特別な寄与になるためには、たとえば、親を施設に入れる入居料として多額の費用を負担してあげた等の事情があるとか、あるいは、次のような要素が全てあったことが必要になります。
①特別性
上に述べたように、通常の親族間を超える特別なことをしたということ。
実務上は、被相続人(亡くなった方)が、要介護度2以上の状態(歩行や移動に補助が必要なことがあり、食事・着替えはなんとか自分でできても、排泄や入浴は、一部手助けが必要な状態)にあったかどうかが一つの基準になります。
②無償性
被相続人(亡くなった方)から、謝礼や小遣いをもらっていた場合には、金額にも寄りますが特別寄与とはならない場合が多くなります。
被相続人(亡くなった方)の預金から、毎月、生活費などをもらっていたということになると無償性がないので特別寄与にならないということになってきます。
③継続性
一定期間、介護を継続していたことが必要です。
月に何回とか看病しに行っていたという程度ですと特別寄与とは認められません。
④専従性
仕事やめて介護に専念していたなど、療養看護にある程度専従していたことも必要になります。
特別な寄与になるかどうか微妙なことは数多くありますが、認められないことも多いので、特別寄与にあまり期待をしない方が良いかもしれません。