マンションの固定資産税評価額を争うも・・・(令和元年8月12日掲載)
リアルバリュー法律事務所での解決事例です。
当事者の特定を避けるため、いつ頃の事件かが分からないように
年月日などは伏せます。また、事案の本質を変えない程度に事実関係を変えてあります。
マンションの固定資産税評価額がおかしいということで、行政に審査申出をしたけれど却下されたという事案です。
マンションなど建物の固定資産税評価は、マンションの構造や設備や施工などについて評点を積み上げていき、その評点の合計に一定金額を掛け合わせるというような方法で建物価額が評価されています。
ところが、この事案では、コンクリート打放し仕上げ施工でない部分についてコンクリート打放し仕上げ施工の評点が付いていたり、モルタル塗り仕上げ施工でない部分についてモルタル塗り仕上げ施工の評点が付いていたりして、マンションの評価額が過大になっていました。当然、評価額が過大であれば、支払う固定資産税も過大になってしまいます。
行政への審査申出が却下されたので、やむなく、裁判沙汰ということになりましたが、これの第一審の裁判官は、コンクリート打放し仕上げ施工とかモルタル塗り仕上げ施工ということについて、専門家的知識はもちろん、一般常識も持っていませんでした。
当初は、民事訴訟の当事者主義(原告や被告という当事者が主張・反論や証拠を提出しなければならず、裁判所は、主張や証拠を出せと指示するだけで良いという制度)から、裁判官が色々なことを言ってくるのかと思いましたが、裁判期日を何回かやっているうちに、この裁判官は、そもそも建築等について、素人レベルの常識もないということに気付きました。
したがって、建築の教科書などを証拠として提示して、コンクリート打放し仕上げ施工やモルタル塗り仕上げ施工の定義や説明など、素人向けに説明するような証拠の出し方になりました。
しかしながら、第一審の裁判官は、結局、コンクリート打放し仕上げ施工とコンクリートに何の仕上げ施工もされない剥き出しのコンクリートの区別や、モルタル塗り仕上げ施工とモルタル塗りが行われていない壁の区別もすることなく、「本件建物のこの部分にはコンクリート打放し仕上げ施工やモルタル塗り仕上げ施工がされているものと解釈できる。」というような訳の分からない理由で、こちらの敗訴の判決を宣言しました。
訳の分からない理由とは、こういうことです。
要するに、ただ単にコンクリートが剥き出しの状態になっている部分について、これはコンクリート打放し仕上げ施工であると解釈できると言うことは、木造建物について、これは鉄筋コンクリート造建物と解釈できると言うことと基本的に同じです。
すなわち、コンクリート打放し仕上げ施工になっているか、モルタル塗り仕上げ施工になっているかどうかは、事実そのものであって、解釈によって変わることはありません。
それにもかかわらず、第一審の裁判官は、解釈で事実を曲げてしまったわけです。
この案件の依頼者は、建築の専門家であったがために、より一層「実際に写真や現地を見れば仕上げ施工が無いのが明らかなのに、解釈で仕上げ施工があることになってしまうなんて、全く訳が分からん。これなら、木造家屋でも、解釈で鉄筋コンクリート造になってしまうのか。」と頭を抱えることになってしまいました。
当然、控訴提起することになりましたが、控訴審の裁判官もイマイチ、仕上げ施工があるか否かが単純な事実の問題であることから目をそらし、行政の解釈で変わりうるというような行政側(被告側)中心の訴訟指揮を取ってきました。
原告である依頼人が専門的知識に基づき、様々な資料を出して(「こんなことまで証拠を出さないと裁判官は分からないのか」とぼやいていましたが)、請求の一部を認めてもらうことには成功しました。
この案件は、木造家屋に、鉄筋コンクリート造の評点を付けて、木造家屋として課税される以上に固定資産税を課税されていたのと同様のことを行政がしてきたわけなので、本来は、こちらの請求が全て認められて当たり前の案件だったと言えるとすると、税務訴訟を課税庁に提起することが、いかに難しいことであるかが分かります。