実は裁判所の判決にも間違いが
今まで、不動産のことをよく知らない弁護士に相談した例を挙げてきたが、実は、裁判所の出した判決文にも明らかな間違いがあったりする。
たとえば、東京地方裁判所平成10年10月7日民事部第30部判決
この判決は一審で確定しまい、しかも、司法の世界では、「事例的意義を有する」(判例タイムズ№.1020)と評価(?)されてしまっている判決であるが、不動産鑑定士の立場からは「決して容認できない意見や暴論が吐かれている」(「継続賃料鑑定評価を再考する」大野喜久之輔 著、以下「同書」と言う。)とされるものなのだ。
同書によれば、本件判決が一審で確定してしまったのも「賃借人(賃料減額請求の原告)は、無理解で非情な判決をうけて(控訴することがばかばかしくなり=梅村注)、裁判を続けることを空しいと判断したのであろうか」と勘ぐってしまうほどのことであった。
賃料減額についての難しい理論的なことは、ここでは省くが、この判決は、裁判官が「差額配分法(賃料の増減額の際に賃料の不動産鑑定で用いられる手法=梅村注)の適用の過程におけるマイナス差額の半額の控除を運用益の控除と誤認した節がある」(同書より)だけでなく、「判決文には、実質賃料、支払賃料など本件事案の核心に関わる重要用語についての誤記が多い。お粗末な判決文というべきである」(同書より)とされるシロモノなのだ。
つまり、不動産訴訟においては、裁判官ですら十分に不動産のことを分かっているわけではない場合があるという恐い側面があり、これは、賃料の訴訟だけに限らないのだ。