瑕疵担保責任に関する民法改正-その1(令和元年8月15日掲載)
瑕疵担保責任とは、売買契約で買ったものに瑕疵すなわち不具合があった場合に売主に対してその責任を問うものです。
改正民法は瑕疵担保責任について考え方や具体的な解決方法を変えています。
まずは、改正後の規定を見てみましょう。
改正民法562条
「 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して
契約の内容に適合しないものであるときは、
買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し
又は不足物の引渡しによる履行の追完を請求することができる。
ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、
買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
2 前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、
買主は、同項の規定による追完の請求をすることができない。」
現在の瑕疵担保責任は、解釈によって、特定物に関することに限られ、
また法文によって瑕疵とは「隠れた瑕疵」ということになっています。
特定物とは種類物でないということです。種類物とは、同じ内容・品質のものが多数存在する商品のことです。
たとえば、大量生産される新車は種類物ですが、中古車は、全く同じ物がこの世に一つしかないので特定物ということになります。
隠れた瑕疵とは、売買契約をした時点では買主が気づけなかった瑕疵のことです。
改正民法では、特定物・種類物という分類に関係なく、瑕疵担保責任を追及できるようになりました。また、法文から「隠れた」という文言が消えました。
判例は、隠れた瑕疵と言えるためには、買主が善意・無過失すなわち、瑕疵があることについて知らなくて、かつ、知らないコトに過失が無いことが必要だとしていました。
しかし、改正民法は、「目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるとき」という書き方に変わっていることから分かるように、売買契約において、売主・買主が、目的物について、その種類・品質・数量をどのようなものとして把握していたのかが重要になります。
それを前提として、給付された物がその契約内容に適合しているかどうかを判断することになるわけです。
逆に言うと、契約に適合していたかどうかという問題に帰着するため、瑕疵が隠れたものであるかどうかを判断する必要がなくなったということになります。
契約不適合と言えば良く、「瑕疵」という言葉が不要になったと言えるかもしれません。