無道路地でも隣地通行権があれば建築確認が下りるか?(2019年3月3日掲載)
無道路地とは、公道に接面していない土地のことです。
公道とは、国道・県道・市町村道・その他建築基準法で道路と認定されている道のことです。
つまり、
無道路地とは、他人の土地を横切らないと公道に出ることができない土地です。
民法は、無道路地の所有者は、公道に出るために他人の土地を通ることができる
としています(民法210条1項)。
学問上は、囲繞地通行権と言いますが、ここでは分かりやすく隣地通行権と言うことにします。
ただし、どこでも自由に通ることができるわけではありません。
通行する土地にとって最も損害が少ない方法で通らなければなりません(民法211条1項)。
たとえば、ある土地の隅の方を通れば公道に出ることができる場合、
その土地の真ん中を通って公道に出ることはできません。
さらに、通行することによって、
通行される土地の所有者に何らかの損害が発生するときには、
その損害に対して償金を払わなければなりません(民法212条本文)。損害賠償みたいなものです。
ところで、建築基準法という法律では、その第43条1項で、
建築物の敷地は、道路に2メートル以上接しなければならない
としています(これを接道義務といいます)。
逆に言うと、
公道に面していない無道路地は、
この2m以上接していなければならないという
要件を物理的にたしていないので、
建築確認が下りないことになります。
それでは、無道路地は、
直接公道に面してはいないが、隣地通行権があることを理由に、
道路に面しているのと同視できるとして、
建築確認を求めることはできないでしょうか。
あるいは、無道路地の所有者は、
建築基準法の接道義務を理由として、
自分の無道路地に2m以上接する道を開設することを
隣地通行権に基づいて、隣地の所有者に要求できるのでしょうか。
公道に出るために幅2m分の土地を使わせろと要求できるのでしょうか。
最高裁判所(平成11年7月13日判決)は、
「(隣地通行権を認める)民法210条と
(接道義務を必要とする)建築基準法43条1項本文は、
その趣旨、目的等を異にしており、
単に特定の土地がいわゆる接道要件を満たさないとの一事をもって、
同土地の所有者のために隣接する他の土地につき接道要件を満たすべき内容の
囲繞地通行権(隣地通行権)が当然に認められると解することはできない 」
としています。
つまり、
接道義務に足りない土地が、足りるようにするための隣地通行権を主張できない
としています。
また、東京高裁(平成11年12月22日判決)では、
隣地通行権としては、幅約0.5メートルあれば十分とされ、
接道要件を満たすための幅約2メートルの隣地通行権が否定されました。
結論としては、最高裁判決が言うように、
隣地通行権と建築基準法の接道義務は、
立法趣旨や立法目的が異なる制度(両者に関係はないということ)
なので、
隣地通行権があるから建築基準法の接道義務が満たされるわけではないし、
接道義務を満たすために、幅2メートル以上の隣地通行権を認めろと言う権利もないということになります。