質問:私の家の庇(ひさし)が隣の土地に越境し、時効期間を経過したのに、越境部分の土地の時効取得を主張できないことって、あるんですか?(名古屋市C区 H さん)
回答:
あります。
時効期間が経過して、時効取得したとしても、その時効取得による所有権移転の登記をしないままでいた場合、時効取得した土地の所有者が売買や贈与によって第三者に変わってしまうとその第三者に時効取得を主張できなくなります。
正確には、売買や贈与によって、新しく所有者となった第三者がその第三者への所有権移転登記をしてから(その第三者に登記の所有権名義が変わってから)更に、時効期間(善意なら10年、悪意なら20年)を経過しないと、その土地を時効取得できないということになります。
なので、時効取得した所有権を確実にしておくためには、その土地の所有者が第三者に変わる前に(相続で所有者が変わる場合は、相続人は、被相続人(亡くなった人)と全く同じ立場なので関係ありませんが)時効取得を原因とする所有権移転登記を請求する訴訟を起こすなどして、時効取得によって土地の所有者が自分になったということを登記する必要があります。
ただ、土地全体ではなく、越境した部分という土地の一部の時効取得の場合、時効取得した土地の範囲を明確にするために確定測量などを行い土地のどの部分を時効取得したのかを正確に表現しなければなりません。
そして、その時効取得した部分を分筆して、その分筆した越境部分の土地について登記上の所有者名義を時効取得した自分にしろと求めることになります。
そのため、訴訟などをする場合、まずは、時効取得した土地の部分を明確にするための測量費用や図面作成費用などがかかります。
この費用は結構ばかになりません。
土地の形状その他によりますが、100万円近くかかる場合もあります。
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