こだわりすぎて失敗する例
調停や訴訟では常に自分の良い方向に手続きが進むとは限りません。
うまく行かない例として、こだわりすぎて失敗する例があります。
(事実関係は本質を変えない範囲でデフォルメしてあります)
例えば、賃貸借契約で借主が契約の目的外使用をしたために
契約違反を理由に立ち退き請求をされた事例。
賃貸借契約を解除して借主に立ち退かせるには、
貸主・借主間の信頼関係を破壊したと言えるような事情が必要ですが、
信頼関係破壊の立証ができると踏んだのか、貸主から立ち退き訴訟を提起された事案です。
審理の経過の中で、裁判官から「目的外使用に応じた賃料増額」と「増額すべき賃料の具体的な金額」を提示した和解案が出ました。
ところが貸主は増額される賃料の額にこだわり(貸主が要求する月額賃料は裁判官が和解案として提示した金額を大きく凌駕していました)、
裁判官の提案した和解は決裂してしまいました。
貸している物件の賃料は、そんなものではないというこだわりがあったようです。
判決は、私の依頼者の目的外使用は、貸主・借主の信頼関係を破壊するほどのものではないとのことで
立ち退く必要はないとの判断になりました(貸主の請求棄却です)。
貸主は、高等裁判所に控訴しましたが、
控訴審でも和解期日が開かれ、結局、賃料増額の和解が成立しました。
ただ、この和解の内容は、私の依頼者が第一審で勝訴判決を取っていたこともあり、
控訴審での和解は、第一審の裁判官が提示した和解案の賃料よりも低い額になりました。
相手方の貸主が控訴審の和解期日で
こんなことなら第一審の裁判官の和解案に乗っておけば良かったということを
言っていました。
こだわりすぎて失敗した事例と言えるでしょう。
訴訟では、こだわりが大事なときもありますが、引くべき時には引くことも大事なのかもしれません。